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フッソング氏のセミナー

2005年03月27日 19:41

元「アコーディオンの貴公子」(初来日の時に金子先生がそう紹介されたそうです。金髪で王子様のようだったとか)シュテファン・フッソング氏の第1回アコーディオンセミナーに行ってきました。 ネットでも見つけたし、なぜか、さなえもんも教えてくれた! 結論を書くと現代音楽のアコーディオンは一般のアコーディオンとは良くも悪くも一線を画している、別物なのだと実感した日でした。 朝日新聞で紹介されたこともあり会場は100人近い大勢の参加者で溢れていました。セミナーはドイツ語で行われ、通訳は後で判ったのですが本職の通訳の方でなくドイツにアコーディオン留学されている御喜美江さんのお弟子さんでした。 最初にアコーディオンの起源は中国の笙だと説明。王道。雅楽がアコーディオンで奏でられます。次にアコーディオンは基本的に homophonic であり、せいぜい stereophonic であるとバッハのゴルドベルクのアリア。素晴らしい演奏。でも、そうなの? たとえばオルガンってポリフォニックでしょ? それにアコーディオンにはコードボタンだってあるではないですか。(でも後で判るのだが、ベースボタンやコードボタンは現代音楽には存在しないのであった。) 歴史の話は終わり、つまりミュゼットもマニアンテもなく楽器の機構の話に移行。スィッチというかレジスターは聴衆をとまどわせたようだが、クラシックの教養溢れる聴衆なのでオルガンのフィートで説明すれば判ってしまうのでした。もちろんオーボエだのヴァイオリンだののウソな名称は使われない。 フッソング先生の楽器はGOLAの特注でチンスィッチが3つもあります。ベースはフリーに拡張されていて9列あります。右手もEまで出ます。フッソング先生はアコーディオンの音域を右手はEまでとご説明されていましたが41鍵だとFだよ。上はa'''だ。Hリードがあってもa''''だからフッソング説のアコーディオンの音域の上限であるc'''''のためには45鍵の楽器が必要になるんですね。あとで質問コーナーで楽器に無茶を要求した人とかいたんですが400万も500万もする楽器だと知っていた人が何人いたことか。 蛇腹の説明で「心臓の鼓動もベローイングに影響してビブラートがついてしまう」というのがジョークで笑うべきなのかと悩んでしまったり(だれも笑いませんでした)、「ほーら動かないでしょ」とキーを押さえずにベローを引くのを目の当たりにして凍りついたり(本気でやったら壊れます)、テクニックとしてのグリッサンドの説明と驚愕の試奏、ベローズシェイクとクラスターを駆使した曲の試奏と驚きの連続のテクニック。特にベローズシェイクでベローの角を利用することで管楽器のトリプルタンギングにあたること(理論的にはそれ以上。何故ならベローの角は8つあるから!)ができるというのは驚異です。相変わらずのジョーク(?)としてはヴィブラートをかけるときには一般に左手を震わせるのだけれど、右手を震わせても足を震わせても(ほぼ貧乏揺すり)「鼻を上から押しつけても出来る」というのがありました。もちろん誰も笑いません。それから各種のパーカッシブな奏法。最新のアコーディオンジャーナルの万久にQでは「楽器に故障が生ずるほど叩くわけでもないでしょうが、真似しないで下さい。もともとある外国の奏者が思いつきでそれを最初にやった時はパフォーマンス効果もあったのでしょうが、だからといって、あとからそれを真似するのでは愚の骨頂でしょうね。蛇腹は叩くために作られたものではありません」とタイムリーに切り捨てられていますが。 さっきも書きましたが、現代音楽のセミナーですから聴衆はクラシック関係者です。まず若い女の子が多い。全体に地味だけれどもお金持ちっぽいです。BCBG と形容すると死語だけれどもクラシック音楽自体が1度死んでいるようなものだから当然なのかもしれません。 最後にアコーディオンで演奏される曲のジャンルの話がちょっとあってバッハのカンタータ「主よ人の望みの喜びよ」の超有名コラール(完奏。名演。喝采)とか、スカルラッティをワンコーラスとか、モーツアルト(断片の断片。すぐに止めました)もあって、「ロマンティックの曲は難しいんだよね」とのコメントの後に「モダンならこんなのがあるけれど」とストラヴィンスキーの「タンゴ」を2コーラス半。これも良い演奏でした。 で、質疑応答があったのですが現代音楽作曲男学生と思われる方の質問が炸裂していました。 もう感心してしまった。あんまりユニークなので。 最初に「プリペアード・アコーディオンってできますか?」って訊くんですよ。これは凄い。リードになにか挟みたいらしい。たとえばプリペアド・オーボエとか指定したらオーボエ奏者は全員帰るんじゃないだろうか。この彼は本当に素晴らしく「蛇腹を外してストローのようなもので直接リードを鳴らせないか」とか「グリッサンドの応用で微分音を使った曲は可能か」とか「キーやボタンを全部押した状態で鳴らせないか」と次々と質問して、最後の質問など通訳の女性と3人がかりで全部押さえた音を鳴らして見せてくれたりしたので、僕も初めて聞くサウンドで有益でした。グリッサンドに関してもひとつのキーに指が二本必要(押さえ加減が微妙なので上げる必要もあるから)とか質問のおかげで引き出せた情報もあって、彼は偉い。あんなに異常なことを普通に訊く人はなかなかいない。全部鳴らすサウンドはリゲティのオルガン曲「ヴォルミナ」が念頭にあったらしいけれど、その知識と発想が一般人とかけ離れていることはいうまでもないですね。でも普通では作曲なんかできないか。 それに比べると2人目の学生さんはステレオ効果に拘って、向きによる音の違いを実演して貰ったりしていたけれども普通でした。マイクで音を拾ってエフェクトをかけたいとか、効果のために演奏中に向きを変えて貰えないかというのにも、もう驚きません。 僕も質問しましたよ。実はね。ストラヴィンスキーの「タンゴ」の時に左手がフリーベースではない普通のベースボタンも押さえてたんですね。で、アコーディオンのことなど何も知らないかのような顔で「ストラヴィンスキーの時には他の曲で使わない左手のボタンを使ってて単音ではない違う音が出たようですが、その辺の余り使わないボタンはどういう機能なんですか」と質問しました。フッソング先生はなんだか困った顔をされて、その説明は複雑でして、この辺のボタンは現代音楽では使わないんです。さっきはオクターブの音を出す代わりに使っちゃったんですけど、それにしてもよく見て聴いてましたねとのお答えでした。そうか。ストラデラのボタンは現代音楽には存在しないのか。 存在しないと言えばミュゼット・チューニングというのも存在しないようです。右手のレジスターの説明で「どうして○の中段には・が二つ並ぶのか」という当然の質問があってミュゼット・チューニングに話が及ぶと思ったら「ひとつでも良いのですが伝統的にそうなっているのです」とだけのお答えでした。 実は、このセミナーには続きがあって1,500円で曲を提出してフッソング先生に弾いて頂けるという企画なので、普通のミュゼットをストラデラベースを使う指定で書いて出したくなりました。本当にやるかもしれません。不協和音の中に金子先生の曲が(「引用」だから)現れる曲とかどうでしょう。 あとベローイングの物理的限界で音が切れることについての質問で「弦楽器の弓ならば8の字のボーイングで音を切らさないテクニックもあるがアコーディオンではどうしても切れてしまう」という素直なお答えに「一体弱音で単音ならばどのくらい続くのか」という質問があり「20分以上」というのにもビックリ。やってみたんだろうな。それともそういう曲があるのか。 最後は最初に質問した学生さん(だと思うんだけれど)で、細かいトレモロが欲しいから楽器を下に置いて両手で鍵盤をつかんで上下するして欲しい、とか他人にベローイングを任せることは出来るかという質問に、「普通にベローイングした方が細かい」「ベローイングが演奏の命だから他人には任せられない」という当然のお答えの後にベローズシェイクを最速でやって見せて頂きましたが、文字通り人間業ではなかったです。本当にテクニックは完璧で「構造上左右の音の大きさは同じなのだがアーティキュレーションの違いで違う音量に聞こえさせられる」とか「実は左右の音質は微妙に違うのだけれども同じに聞こえるように演奏している。そうしないとこうなっちゃうんだよ」というのを聴かされたときも開いた口がふさがらない感じ。 要は、そのテクニックがいわゆる「現代音楽」に向かっていいのかということですね。僕だって好きな現代音楽(三宅榛名さんとか三宅榛名さんとか三宅榛名さん。というのは冗談でシュトックハウゼンの初期とか、フィル・グラスとか、テリー・ライリーとかも聴きます。なんだかロック・ファンぽいですが)はあるけれど、それだけが好きな訳じゃないし。むしろ僕の中で占める部分がそんなに大きくないのが「なんだかもったいなく感じる」原因なんでしょうね。(2005年3月27~31日)
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