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湯治場の音

2007年08月20日 09:02

気が付くと帰ってきてから10日以上経ってしまったのだけれども、今月は湯治に行きました。
温泉ではなくて湯治です。

行ってきたのは群馬県の四万温泉
おそらく一番由緒ある宿積善館に、この湯治プランで5泊6日。1泊2食で7,500円はありえない安さ。東京駅から往復5,000円の高速バスを使って徹底的にコストパフォーマンスにこだわってみました。

湯治場の一日は:
 6時頃適当に起床して温泉へ
 8時に大広間で朝食
 散策とか観光とかにでかけて適当に昼食
  熊が出たのであまりハイキングとかできないので大きな道で上流のダム湖まで歩く
  無料の温泉にも入ったし
  イノシシコロッケ、地鶏の唐揚げ、イノシシ汁の試食にも参戦
  「探偵ナイトスクープ」でいうところの「パラダイス」紙一重の薬王園へはわざわざバスに乗って
 宿に帰って温泉へ
 夕食前にまた温泉
 6時に大広間で夕食
 温泉へ
  一度だけ夏祭りがあったので夜の外出もしたけれど
  地元の人ばかりなので、地酒の試飲をしたらそそくさと帰ってきたり
 そして寝る前に温泉
という素晴らしく暇なもので、もちろんアコーディオン持参で毎日2~3時間は練習しました。あとは読書。田中哲弥と青木祐子とアンゴーを読んだり。それから「もっと英語漬け」。

湯治場でアコーディオンの練習なんて迷惑千万と思うでしょうが、それほどでもないのです。なぜならば宿のそばには清流が流れていて、その音と蝉がとにかく絶え間なく響き続けているから。

川の音がどのくらい大きいかというと、激しい夕立が降ってもわからないくらいです。僕は3階の部屋で窓を開けて窓辺でアコーディオン弾いてましたが、眼下にあった宿屋の玄関を訪れる泊まり客や立寄湯の人たちは、誰も上を見上げませんでした。おそらくアコーディオンの音は川にマスクされて届いていなかったと思われます。

川も蝉も音量は大きいのですが決して煩くはなく、素晴らしい音響でした。ノイズ音楽も音響系も敵いません。まず音質が最高で、音像が立体的。温泉から3キロ程川下に歩くと川の底が転がる石で削られて穴が出来た甌穴という場所があり、ここでは川の近くまで谷を降りていけるのですが、そこでの音響は川のせせらぎが複雑に反響して聞き飽きないものでした。

いわば自然のドローンミュージックです。

それだけの音に囲まれて人工的な旋律を鳴らすのは勿体ないほど。持って行ったアコーディオンが小型の1枚リードなので余計にピロピロなる音と重厚な川の響きが違って感じられます。唸りが入るミュゼットの楽器ならば一種の雑音なので少しは対抗できたかもしれません。

音楽は人為的人工的なので自然には勝てないのですが逆にレンジが狭いのでなんとかなるのかな、とか。風景と風景画の関係に似ているな、とか。自然は本当に素晴らしいのだけれども、意識しないと常にある素晴らしさに気付かない。芸術は提示されるものなので、それほど素晴らしくなくても何かを与えてくれる。

1971年に48才で自殺した写真家のダイアン・アーバスのことばを思い出したり。

「現実的なものこそ、幻想(ファンタジー)なのです。幻想は現実から生まれます。幻想は本当[に完全なもの]です。わたしたちのものの見方は、完全に幻想的なのです。ときとして、それが写真の中にはっきりと認められることもあります。非常に現実的だからこそ、幻想的なのです……幻想的だから現実的なのではありません。現実は現実です。現実を仔細に調べてみると、かならずや幻想に達します。現実という言葉を使うとき、それはカメラの前に実際にあるものの表現でなければなりません。わたしが言おうとしているのは、現実を現実と呼び、夢は夢と呼ぼうということです」(『炎のごとく 写真家ダイアン・アーバス』パトリシア・ボズワース526ページ)

「どうしていいいかわからなくなったら、写真から目をそらして、窓の外をごらんなさい。なぜなら現実を見ることこそ、自分の写真をつくるという行為にほかならないからです。
 わたしはみなさんに写真の話ができます。わたしたちはみな口がきけ、目が見えます。わたしたちの前にはすべてが開かれているのです」(同書527ページ)

湯治場にいてお湯につかったりしながらそんなことをぼんやりと考え続けていました。ナース・ウィズ・ウーンドのシュールレアリスティックな初期のコラージュ音楽作品で突如日本語で叫ばれたセリフ「よく見ろ、馬鹿」が頭の中でリフレインします。そして川が流れる音を聴き続け自然の景色を見つめ続けた日々。

もうすこし考えてもうすこし形にできればと思います。
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