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ジェームズ・クラッブ&ガイル・ドラウグスヴォル

2004年10月23日 18:04

 クラシカル・アコーディオン・デュオを聴きに所沢へ。西武鉄道に乗っていると東京の果てに向かっている気分になりしたが、果たして所沢は埼玉です。  クラシックのアコーディオンを、きちんとコンサートで聴くのはおそらく初めて。この演奏者はコンサートと同じレパートリーで既にCDを発表していて噂に聞こえていたし、CDの現物を虞先生の東京アコーディオン文化倶楽部で見たこともあります。金子先生に見せて頂いたベルギーのフェスティバルのパンフレットにもドラウグスヴォル氏の名前があったような。しかしCDは入手できず結局実演で初めて接することになりました。  会場の松明堂音楽ホールはビルの地下にあるのですが、エントランスからお洒落でただ者ではない感じ。先週行った四谷のコア石響といい、昔ではあり得ないような場所が増えました。地下にある小ホールでプログラムも凝っている。これって今は亡き渋谷ジャンジャンとコンセプトは同じなのだけれども、かつて無かった贅沢さが醸し出されています。しかも埼玉。  コンサートが始まってびっくりしたのは楽器がボタン式だったこと。クラシック=ピアノ鍵盤という刷り込みがあったんですね。イギリス人とノルウェー人のお二方は大変に体格良く、髪型はスキンヘッド風。黒シャツ黒ズボン。一言で言って迫力です。ピジーニのコンヴァーターのハイエンドモデルをフリーベースで演奏されていました。お揃いなのですが、なぜかエンブレム(現行モデルと違って小振りで機種名?もはいっているもの)が逆についていました。80席のホールの最前列は細かいところまでよく見えるのです。  最初の曲はストラヴィンスキーの『ペトルーシュカ』。現在パリ留学中の、のだめちゃんがコンクールの最後に弾いた『~からの3楽章』ではなくて、オリジナルのバレエ音楽、47年の3管編成か11年初演の4管編成かがわからないのですが(オーケストレーションは4管板だと思ったけれども、メロディーの流れが47年版っぽかった)オーケストラヴァージョンを忠実かつ大胆に編曲しています。これはリストによるベートーヴェンの交響曲のトランスクリプションと同じ趣で、アコーディオンの名人芸としても楽しめるし原曲を知っていれば楽しさ倍増。木管楽器の掛け合いがフリーベース・アコーディオンならではの右手と左手の振り分けだったり、本来ソロとオブリガートなのを一人で片手で弾いてみせたり。  実は『ペトルーシュカ』は僕が一番好きなクラシック曲の一つなんですね。ハイティーンの頃に死ぬほどで聞き込みました。スコアも買った。音楽之友社とか全音でない洋書のスコアを最初に買った曲のような気がします。驚いたことに全部覚えてました。声に出しはしなかったけれど、とにかくずっと一緒に歌ってました。変拍子の構造とか、繰り返しが何回あってトゥッティがどーんと入るとか、対旋律がああなっているとか、当たり前だけれども自分の思うとおりに音楽が進むんで、ご機嫌でした。後半になるとスコアの版面さえも脳裏に浮かんでヤヴァイくらい。そういえば昔も思ってたのですが、あの曲だったら指揮できるかもしれない。周りからは怖い客に見えたかもしれないけれど、熱く聴いていたのは奏者に伝わって喜んでもらえたのではと思っています。  編曲も演奏も文句ありませんね。打楽器のパートは楽器をたたいてパーカッシブに表現され(ピジーニのグリルがへろへろになってました)、演奏ではなくて顔の表情を使ったり、二人が顔を見合わせたり、体を大きく動かしたりのパフォーマンス要素も楽しかった。白眉だったのは「ペトルーシュカの死」のゲネラル・パウゼでエア・ボタンを押して蛇腹を開ききって奏者が動きを止めたところ。ああいう表現もあるんですね。  前半の残りはピアソラで「オブリビオン」と「リベルタンゴ」。4手が全開だったストラビンスキーに対して、メロディー担当のベースボタンは使われず、なんだかんだいってもポピュラー音楽はクラシックに比べれば構造が簡単なのだなぁと思わされました。メロディーの表情、特にダイナミックスが素晴らしく、大曲のあとなのでリラックスして美しい音楽でした。  休憩後が『展覧会の絵』。このプログラムは順当だなと感じました。なにしろ『ペトルーシュカ』は難曲だし体力があるうちに決めたいところでしょう。『展覧会の絵』は派手で見せ場があって盛り上がって終わるし。こちらはムソルグスキーのピアノ曲を元にして、ラヴェルの管弦楽版の香りもときには偲ばせる編曲だったのかな? 音楽よりも演奏を聴く余裕がこちらにもあって、特に後半は和音でオクターブをがんがん跳躍したり凄いアルペジオ、スケールとピアニスティックなダイナミスムを堪能させる演奏でした。指使いを参考にしたりもできました。何故かベースボタンがひっこんだままになっていたり、それがいつの間にか戻っていたりも観察できました。やはりあれだけ激しい演奏だと楽器も疲弊するんですね。  プログラムの最後は、やはりピアソラ。「天使のミロンガ」と「エスカロ(鮫)」。演奏後に譜面台を覗いたら、メロディーはヴァイオリンの楽譜だったので、伴奏を一人で作っていた左の少し若く見える方(と言っても同い年らしいのですが)が編曲者のクラッブ氏なのでしょうか。ちなみに大曲は二人の編曲でしっかり譜面が書かれているようでした。あれ出版されているのならば欲しい。  80人とは思えない拍手喝采の中のアンコールは「ブルガリアのフォークミュージック」。キャオ教授ならば曲名がわかるんでしょうね。2人は同じく拍手の中舞台を歩み去ってコンサートは終わりました。  超絶技巧という触れ込みの2人でしたが、聴き終わって印象に残るのは音楽性の高さと曲の良さです。確かに技術は盤石で、例えばベロウズ・シェイクなどとんでもないのですが、それが特出しない。曲の必然性の中で用いられる。いやぁ、良いものを聴きました。あの二人のフォーマットは完成しているし、まだ三十代なので、ずっとこのレパートリーを磨き続けてくれればそれでいいとさえ思います。で、また来日したら聴きに行きます。世界のどこかの街でたまたまコンサートをしていたりしても、それはそれは素敵なことでしょう。  どういうわけだかアマゾンで入手可能になっていました。しかも885円。さっそく注文しました。もう一度聴けるのとライナーを読むのが楽しみです。
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